4. 正しいのかなんて本当は誰も知らない

今更すぎるのだが、宇多田ヒカルの「初恋」を初めてフルで聴いた。

(宇多田ヒカルは大好きなのだが、Apple Musicに入らないかと思い、買うのをずっと渋っていた。結局待ちきれなくて買っちゃったけど。)

 

案の定、物の見事に心を奪われた。

そして初めてお付き合いをした高校1年生の頃に引き戻され、その時に芽生えた奇妙な感情まで全て思い出してしまった。

 

というわけで、ひっそりとここであの頃のエピソードを書いてみたい。

きちんと明かすのはここが初めてだが、かなり長くなってしまったし、あまり真剣にじっくり読まないでほしい (なら書くなバカヤロウ)。

 

ちなみにクソどうでもいいのだが、直近の元彼のことは何も覚えていない。

それなのに、もう7年も前のことをこんなにもよく覚えていたというのは、人間は幸せな思い出だけを残して、苦しかったことは忘れるようにできているということなのかもしれない。

 

 

さて、初めてのお付き合いは、高1に上がったばかりの時に始まった。

塾で中学から仲が良く、帰る方面も同じだった友達が、いつものように一緒に帰っている途中で急に深妙な顔つきになり、告白してきたのである。

 

彼のことをそういう目では見ていなかったが、真剣な目つきと声のトーンに押されて、

そして「彼氏」という女子校育ちの私にとってはなかなか叶いそうにない憧れの存在が思いもかけない早さで叶ってしまったことに、少なからず嬉しさを感じてしまって、すぐにOKを出した。

 

彼は、本当にできた人だった。

 

身長が高く、顔立ちは所謂イケメン、同性・異性にモテる性格の良さ、運動部所属、博識、私より頭が良い、大人びて落ち着いた雰囲気。

 

思い出補正がかかっているかもしれない。

だが、「なぜこんな人が私なんかのことを好きになったんだろう、物好きもいるもんだ」とずっと思っていたくらいには、完璧な男子高校生だった。

多分、彼のことを学校の誰かが見ていたら、私は底辺で腐らずに、スクールカーストの頂点、バラモンの地位に就けていただろう。そんなものには微塵も興味がなかったけれど。

 

順調にお付き合いは進んだ。

特に高1の頃は学校嫌いがピークを迎えていたから、あまりそのことで愚痴を言ったりはしなかったけれど、彼と話していると本当に癒された。

そして、今でも忘れられないのだが、自分は学校(男子校)でモテまくって順風満帆な学校生活を送っていたにも関わらず、学校が大嫌いという私を受け入れ、「嫌いなら無理に好きにならなくて良いじゃん、余計苦しくなっちゃうよ」とまで言ってくれた。

 

それでも、分からないことがあった。

「この人のことが本当に好きなんだろうか」と、私はずっと自信が持てなかった。

 

確かにかっこいい。

確かに優しい。

確かに彼は私のことが好き。

 

でも、私はなぜか彼のことを好きだと、自信を持って言えなかったのである。

 

自分のことなのに、理由は今でもよく分からない。

当時の私に会えるならば、「いやぐちゃぐちゃ言ってるけどお前それ確実に好きだろ」と、必ず言うだろう。

だがなぜか、16歳の私は「友達の好きと恋人の好きって何が違うんだ」「なんであいつは私なんかを好きなんだ」と無駄に考え込んで、ますます沼にハマって、1人部屋のベッドでウンウン唸っていた。

 

そんな中、高1の冬休みである。

私は、彼以外の人に「好きだ」という感情を抱いてしまった。

 

なぜ「好きがわからない」と悩んでいた私が、その人のことは「好きだ」とあっさり自覚したのか。

その人とはよく顔を合わせていたが、私は、その人を前にするとたまにどうしようもなく胸がギュッとしてしまうこと、気づけば姿を目で追ってしまっていることを自覚した。

 

付き合っていた彼氏には、正直そんな想いは抱いていなかった。

気づけば目で追ってしまうなんてこともしなかった。

そして、「ああこれが恋なんじゃないか、好きってことなんじゃないか」と思ってしまったのだ。

 

 

 

ここで冒頭に戻り、宇多田の初恋である。

 

欲しいものが

手の届くところに見える

追わずにいられるわけがない

正しいのかなんて本当は

誰も知らない

 

 

あの頃の私は、こんな不安に駆られてその人と急速に距離を取った。

 

こんなにできた人が、真逆で惨めな私のことを好きになってくれたから。

好きかどうか分からないと悩んだが、やはり彼氏は大事な人で、傷つけたくないと思ったから。

 

 

 

彼氏とはその後2年ほどお付き合いを続けて、私からさよならを告げた。

2年の間、ずっと彼は私を大事にしてくれていたと思う。

 

別れるという結論を下したことが正しかったのかは分からない。

なぜなら、彼以上にできた人に出会えることはない気がするから。

よりを戻したいとは思わないから、きっと合っていたのだろう。

それでも、もし私が彼に別れを告げなければ、別の結論があったのかもしれない。

 

そして今でも、同じ時期に芽生えた私の感情のどちらを「初恋」と呼んだら良いのか分からない。

宇多田ヒカルに聞いたらきっと、後者じゃないかと即答される気がする。

 

 

www.utadahikaru.jp